ロール印画紙の暗室作業ノート

前回の姉妹記事から引き続き、今回はロール印画紙を使用した暗室作業について。前記事にもベースとなる共通部分があるので、ご一読いただければと思います。

私自身、ロール印画紙はつい先日初めて焼いたというロール初心者ではありますが、WEB上に全くと言っていいほど情報が無いのは寂しい限りですので、私がやってみた中での気付きごとや工夫などをまとめてみます。広くない自宅暗室などのスペースでも、しっかり準備をすればプリントは可能です。

なお、ロール印画紙の展示風景は、以下作品ページでご覧いただけます。

事前の注意点

イルフォードのスタンダードなタイプのバライタロール印画紙は長さが29.8m(表記は30mの場合も)あり、新しくなったオリエンタルのニューシーガルは20m。これらは10枚以上プリントを作るのでなければちょっと手を出し辛い。残しても次に使う予定があればよいが、特殊サイズゆえに友人知人に聞いてみても欲しい人がいるかどうか。
最悪、残った分をテストピースにしてしまうことは出来るがあくまで最終手段。

銘柄は限定されるが、10m程度の短いバライタロール紙もあることはあるので後段に。

余り過ぎても困るが、国内・海外共に常時在庫があるとは限らないので印画紙が途中で足りなくなるとこれも大変だ。1枚をどの程度の長さでカットしたかをざっくり記録して、多少焼きが気に入らなくてもどんどん先のカットを進めてしまって最後に焼き直しの算段をした方がいいだろう。

また、ロール印画紙で綺麗なプリントを仕上げたいと思ったら、露光云々よりも暗室作業環境の準備や水を使う工程で大きなバライタ紙を扱うことへの慣れが必要だ。いきなりの挑戦を否定はしないが、大全紙や小全紙を1度は経てからでもいいとは思う。

様々なロール印画紙

ロール印画紙と一口に言っても、現在でもまだ色々な種類とサイズがある。いつも利用しているアメリカのB&Hで取り扱っているロール印画紙の一覧が以下。

イルフォードとオリエンタル、ベルゲールにフォマからケントメアと国内でも知られたブランドが並ぶが、常時在庫はしない受注生産のものも多い。
幾つか見受けられるイルフォードの「Galerie」銘柄は、ウエットプロセス処理は同じだが、三色レーザーやLEDのデジタル露光用に最適化された印画紙とのことなのでここでは除外して考えた方がいいだろう。

オリエンタルは国内と海外のラインナップが異なっていて(製造自体違うという話も)、最新のニューシーガルVC-FBIII Advanceは英語で検索しても全くヒットせず。国内販売ではロール印画紙もあるので、一旦ヨドバシへのリンクを。

なお、イルフォードのバライタロール印画紙は、国内量販店価格で185,700円。同じものがアメリカのB&Hでは523.50ドル+送料。この価格差では海外通販頼りとならざるを得ない。

サイズと種類

海外販売で最も種類の多いイルフォードを例にとると、シート印画紙同様にバライタとRCペーパーのロール紙があり、光沢・半光沢といった表面の処理からクールトーンとウォームトーンのものも揃っている。
バライタ紙のロール幅は、一般的な42インチ(106.7cm)以外に、50インチ(127cm)や 56インチ(142cm)幅も特注で用意されており、長さは概ね98フィート(29.8m)。
RCでは42インチより狭い幅のものも多数あり、特注の場合も多いが幅・長さ共に非常の多くのバリエーションがある。

国内販売のオリエンタル・ニューシーガルVC-FBIII Advanceのサイズは108.5cm x 20mで、幅はイルフォードの42インチより僅かに広く長さはおよそ2/3と短い。ラインナップも国内ではバライタ1種類のみ。

また、長さについては銘柄が限定されるが、イルフォードのウォームトーンや、ADOX(アドックス)という旧アグファの乳剤をベースにした印画紙、特注となるがベルゲールなどにも長さ10mという扱いやすいサイズのものが用意されている。

余談だが、旧アグファのMCC(マルチコントラストクラシック)110はちょっと使っていたことがあったが、ベースの紙の色がクリーム色で更に温黒調ということで写真を選ぶ紙だった。ADOXになってからベースの紙が違うようで、展示で見た事があるのだがアグファ時代とは全く異なる印象。次回条件に合えば、ADOX MCC110 10mを使ってみたい気も。

と、まぁ銀塩写真が明らかに下火となった現在でも、作品の目的や意図に合わせてまだまだ選択できる余地は十分にあります。

印画紙の裁断

巻紙であるが故、取り扱いが難しい面があるロール印画紙だが、未露光の段階で全暗室で印画紙をカットしてくれるありがたい存在の業者さんもある。私自身は利用した事が無いのだが、事前にサイズを決めてプリントしたい場合は問い合わせてみると良いだろう。

後段で記載するが、露光時はざっくり大きめにハサミなどでカットして、最終の仕上げで不要部分を切り落とすという方法でも対応は可能だ。
なお、イルフォードは大全紙よりはるかに大きい30×40インチ(約76x101cm)の50枚入りがシート紙で用意されている。ロールの扱い辛さを気にするなら選択肢としてアリかと。

また、かつては瀬戸正人氏、近年では小松浩子さんなど、ロール印画紙をカットしないプリントで作品の制作・展示を行っている写真家の方もある。労力は圧倒的に掛かるだろうがインパクトは強大。切らなきゃいけないというのは一般論でしかないので参考までに。

箱の中身は?

ロール印画紙を初めて使う場合、中がどうなっているかをあらかじめ知っていると不安も少ないと思うので解説します。最初、セーフライトの下で結構焦りましたので…

なお、メーカーによって多少差異はあると思いますが、私が使用したのはイルフォードのマルチグレードFBクラシック。
印画紙の箱は20cm角で長さは110cm程度。蓋はかぶせ式で、シート紙同様に箱を開けると黒のビニールに入った状態の印画紙がある。

黒ビニールの上から、印画紙の左右にプラスチックのはめ込み式スペーサーが取り付けられている(右上画像・クリックで拡大表示)。
これはロール紙が接地して圧力で変形してしまわないように、印画紙全体を浮かせる為のもの。私の場合、最初に外してしまって元に戻さず数日で印画紙を使い切りましたが、長期保管するならスペーサーを付けて置いた方がいいでしょう。

黒ビニールは横側が開いている仕様で、印画紙の乳剤面は内側になるように巻かれています。
暗室内で印画紙をハサミでカットする際、黒ビニールを一緒に切ってしまう事が何度かあったのでしっかり脇にどける事を推奨です。もし切ってしまっても、慌てず黒のパーマセルやビニールテープで塞いでしまえば大丈夫。

印画紙は厚手の芯に巻かれており、最初の部分は軽く紙テープで留められていた。最初や最後は使えないという話をどこかで聞いたような気もしたが、支障なく全て使い切ることが可能だった。もしかするとメーカーによって多少差異はあるかも知れない。
ただ、最後に向かうに従って印画紙のカーリングはきつくなり、押さえをしっかりしないと印画紙が浮いてピント面などに若干不安が出る可能性はありそうだ。

印画紙の向き

イルフォードのロール印画紙の幅は約106cm。これをプリントの横幅とするのか、縦幅とするのかで必要なスペースに大きな違いが出る。
35mm判で言えば、約70x106cmなのか106x159cmで焼くのかといった違いだ。

私の場合は6×7なので、85x106cmか106x132cmといった選択肢。KULA PHOTO GALLERYでの写真展では、ギャラリーの壁面長と自宅で処理できるサイズが上手く一致したため前者でプリントした。

大きな印画紙だからといって、最大サイズで使わなくてはいけない訳ではないので一応。

引き伸ばし機のセッティング

床面投影をする場合、引き伸ばし機は大全紙・小全紙の暗室作業ノートで掲載したように支柱を前後逆向きに取り付け準備するが、ヘッドの高さを確保できてもネックとなるのが引き伸ばし機の台板でのケラレだと思う。これ大事。私自身も意外と盲点でした。

私の場合、ケラレ回避に2~3cm程度の余裕しかなく本当にギリギリで焼けたという感じ。
大全紙までの引き伸ばしに使用しているELニッコール105mmはヘッドを最大に上げても印画紙サイズをカバーできず、防湿庫からやや広角のミノルタのCEロッコール80mmを発掘してきて使用した。

広角の引き伸ばしレンズを使用すれば、ヘッドの高さは低くて済むが台板でケラレる可能性は残る。海外製のイメージサークルの大きなWA仕様のレンズなどもこの部分には注意だ。
余談だが、CEロッコール80mmはELニッコール80mmよりもイメージサークルは気持ち広い印象だが、それでも6×7ノートリミングをカバーするには若干足りずに四隅が心もとない。

台板でのケラレを回避する最も良い方法は、右画像のような昇降機能の付いた机を台座とすることだと思う。予算が許すならオカムラの電動式swiftシリーズなどが幅の選択肢もあり強度も高くいいのだが、15万円前後という価格がネック。

ハイデスクという高さ1m前後の机もあるが、暗室に使わない普段何に使ってどうしておくのか、強度が十分にあるかしっかり考慮を。
以下、手頃そうなサイズと価格帯のもの。現実問題、私も選ぶならこの辺だろうか。

天板が木製だと引き伸ばし機の重さでたわむ可能性もあるので、出来ればスチール製の方が良い。新品で買ってすぐ使うなら問題は無いだろうが、重い引き伸ばし機などを乗せっ放しで保管するなら一考を。

また、天板サイズではなく脚の内側の寸法で焼ける最大サイズが決まるので、天板の幅のみの記載の場合は多少余裕を見て購入した方が良いと思う。

なお、印画紙がデスクの脚の横に来る場合、脚の内側に黒のパーマセルテープなどを貼って乱反射防止の処理をした方が良い。引き伸ばし機からの光が脚へ反射して、端の部分だけ変に濃いプリントになる事があるためだ。濃度の浅い空などは特に注意。
次のセクションの写真、露光の際の紙の上側は印画紙の箱で押さえたのだが、この箱にも反射防止にパーマセルテープを貼ってあるのが見えると思う。

壁面投影は未経験なので伝聞と推測でしかないが、露光範囲を変更するには引き伸ばし機自体を前後する必要もあり、壁面とネガの平行を出すのにかなり労力が必要だったと聞く。
壁に長い印画紙を貼ればたわむリスクもあるので、紙の固定方法なども工夫が必要だろう。

ネガの位置決めとピント合わせ

ロールプリント用のガイド 机の下奥が印画紙の箱

印画紙が大きいため、対応するイーゼルも無ければ代用品を作ることも難しい。
そこで最初のネガを床面に投影しておおよそピントを合わせ、像のサイズをメジャーで測りながら、床にテープを貼って印画紙をセットする際のガイドを作成した(右画像・クリックで拡大表示)。

カットまでして仕上げた最終的なプリントサイズが85x100cmで、床のガイドと投影された1コマのサイズは90x110cm程度だったと思う。

つまり私の場合、露光の段階で左右僅かにカットされ、仕上げで印画紙を裁断して更にトリミングされた。これはもう少しギリギリの投影でよかったと反省が残ったが、長くなるので先に技法面を書いてしまいます。

ネガをセットをする場合、濃い色のフローリングなどへの投影だと像が見え辛いので、印画紙の裏など白い紙を置いて確認をすると非常に判りやすくなる。

ピント合わせは、普通の人はピントルーペを覗きながら引き伸ばし機のピントノブに手は届かない。かつてはピントノブに付けて遠隔調整するアクセサリーなどもあったが、現状単体での入手は困難。
僅かにピント位置を動かしてルーペで確認、戻してまた確認を繰り返すことになるが、最初に上から目視でざっと合わせておけば3~5回の行き来で概ね合うと思う。
なお、この時に引き伸ばし機のヘッドの下レンズ部分に頭をぶつけないように注意。ぶつけたからこそあえて書いているのです。

また、ネガを差し替えてもヘッドを昇降させずピントもそのまま(チェックのみ)にすれば手間も間違いも少なくなる。


さて、床面への投影サイズについて。あまり印画紙の幅≒1コマの幅ギリギリで合わせてしまうと、印画紙セットの際にズレや曲がりがあると、コマの一部が欠けたり余白や余黒が出ることに。

ノートリミングでいいなら、全て印画紙内に収まるようにしてネガのフチに合わせて裁断すればいいのか。余白を取り過ぎるとイメージサイズは少々小さくなるけど。

余黒やフイルムのコマ番号は、それらが印画紙に露光されることによって違ったイメージを呼び起こすものではあるが、私は絶対にそれらを出さないという意図があったので余裕を持って排除した面がある。
右上画像は仕上げの裁断をしてない没プリント。左右は露光の時点で切れていて、上下は余黒まで出るようにセットしています。なお私のネガキャリアは、ノートリミングで焼けるように6×9対応のガラスキャリアのマスク上下部分を削ったものです。

うーん…書きながらちょっと困ってます。正直この辺は、もう何回かやってみないと自分にとって最適な方法は判らないかも。

印画紙のセット

先の画像のように私はロール印画紙は机の下に入れて作業していたが、ネガの位置決めとピント合わせが終わって、印画紙をセットするセーフライト下での作業手順は以下のような流れ。
印画紙はロールの幅がプリントの横幅になる向き。結構細かく書いてみます。

  1. 箱を開けて黒ビニールごと印画紙を箱の外に出す
  2. 印画紙の箱は重ねて(蓋はしない)机の奥側、床のガイド上辺の向こうに押し込む
  3. ビニールから印画紙を完全に引き出してビニールを脇によける
  4. 床のガイド上辺に印画紙を合わせて、転がしながら広げる(上から丸まって来るが無視)
  5. ガイド下側まで広げたら、若干余裕を持ってハサミで印画紙をカット
  6. 切った印画紙は丸まるので一旦放置し、本体のロールを黒ビニールに入れ(印画紙の片側を足の甲に乗せて浮かせると楽)箱に戻す
  7. 箱をガイド上端外側に置き、切った印画紙を少し深めに箱の下に差し込む(どれくらい入っているか判りづらいので、上辺全てが押えられるようにちょっと慎重に)
  8. 印画紙を転がすように広げ(引っ張らない)、左右のガイドで位置と曲がりを確認
  9. 印画紙の下端を後述の裁断用定規を乗せて押さえる
  10. 上下ともガイドの外側で印画紙を押さえているか(イメージがケラレないか)確認
  11. 絞り大丈夫か?フィルターは?とビビリながらも露光

改善の余地がありそうなのは印画紙の上側の押さえ。ロール紙の箱よりも、もう少しコントロールできる物の方が抜けやズレに気を使わなくていいかも知れません。重い写真集を何冊か、または上側を定規にするとか。

なお、印画紙の押さえてない2辺(今回は左右)に若干浮きが出ますが、ピント位置が遠く深度が深くなるゆえかピントのズレや像の流れは全く判らないレベル。
使用する引き伸ばしレンズやプリントの条件にもよると思いますが、あまり神経質にならなくてよいと思います。

露光

本番プリントの前に、テスト露光をして秒数や焼き込み等の確認をするのはロール紙でも同じです。私はテストピースとして余分にあった大四切2~3枚を使用し、すぐ脇に現像と定着のバットのみ用意して作業した。
大きなサイズで確認してもいいが、テストピース用の現像・定着環境や印画紙のコスト等々、この辺は自身でやりやすい方法を一考を。

ロール紙のプリントはサイズが大きいため、大四つ等のプリントよりベースのフィルターを1段前後硬くした方が結果が良かった。大サイズでは中間調が綺麗に出るグレートーンよりも、ある程度コントラストがあった方が見栄えがすると思う。

私の場合、小サイズのプリントで多く焼き込み等を行っているものでも、ロール紙のプリントではできるだけ工程は簡略化した。1mを超えるサイズのプリントであまり細部をどうのと言っても…と思って。
もちろん、ベースの露光時間が長くなるので、覆い焼きなどは作業しやすくなるのでこの辺もまたお好みでといったところか。

現像処理~ウエットプロセス

印画紙に露光した後の現像から水洗処理までの水を使う工程も、広いスペースを確保できない環境では難関の一つとなる。

今回私は、印画紙を浴室の壁に貼り付けて写真用スポンジで薬液を塗布するという方法で処理を行った(右画像・クリックで拡大表示)。

この塗り現像という方法では、現像液1L程度で1m四方くらいの印画紙を処理可能。現像後の工程は、水シャワーで停止を行い別のスポンジで定着液を塗り、再度水シャワーで水洗。最後まで印画紙は貼ったままだ。

昔と比べてバライタ印画紙もさほど押しの効かない状況に加え、塗り現像はバット現像のように潤沢な液が入れ替わる訳ではないので現像の進行も遅い。更に塗りは毎回均一なワケではないので、現像も定着も時間を測らず、もういいだろと思うところまで処理を行った。恐らく現像で6~8分程度。
私がプリントをしたのは6月初旬だったので薬液の温度は成り行きだったが、冬場などは液温管理に注意した方がいいだろう。

水洗も10分水を当てたかどうかといったレベルだが、水洗不足による問題などは特に出なかった。アーカイバルな処理をという事なら、そもそもこの方法自体が向かないだろう。

以下、注意すべき部分を幾つか箇条書きで。

  • 事前に印画紙を貼れる壁面幅を確認し、現像できるプリントサイズを考えること
  • 塗っている途中で現像液などが足りなくなる事が無いように、都度液の残量を確認
  • スポンジは強く当ててこするのではなく、十分薬液を含ませて塗る感じで
  • シャワーで壁を濡らした程度では印画紙の貼りつきは弱いので、後述する対策などを
  • 印画紙の貼りつきに波打ちが出やすく、スポンジでこする際に折れジワが付く可能性大
  • 印画紙上部を高い位置に貼り付けると、スポンジの薬液が腕を伝って来るので要注意
  • 現像液・定着液は回収できない為、下側に水を流しながら行うなど次善の対策を
  • 停止抜きのせい?か、印画紙フチが黄色くなる汚染が発生する

その他の処理方法

普通のバット式の現像処理をしようと思うと、当然ながら非常に広いスペースが必要となる。
以下resist写真塾のインタビュー記事で、写真家の石内都氏が木枠でプールを作っての現像処理等について実際の画像付きで述べてらっしゃる。

また、奥行きの無い横長のバットを作成し、その中で回転させながら巻いたり緩めたりで現像するといった方法もあるようだが、バライタ紙だと紙のコシは無くなるであろうし一人で綺麗に仕上げようと思うとナカナカ大変だとは思う。
サイズまでは調べてはいないが、プラスチックコンテナなどのキーワードで検索してみると適合しそうなものは幾つか見つかるかも知れない。

以前も紹介した書籍だが、以下の「B&Wプリント・ワークと暗室」は暗室作業の工夫や写真家の瀬戸正人氏が20mロールプリント作品の作業工程を公開していたりもするので非常に参考になると思う。

塗り現像でのムラ

下の画像が、展示した写真の現像ムラ部分(クリックで拡大表示)。ムラの原因は、最初に現像液をつけた際に液ダレした部分と遅れて現像液が塗布された部分との濃度差。

濃度が高いところは判らないため低濃度のフラットな部分に出るのが主で、塗り現像の途中でこの辺がムラっぽいから…とスポンジで集中的に現像液当てても解消されなかった。最初の液ダレだけが過剰に濃度上がって、十分な時間現像してもその差は埋まらない印象。

ロール印画紙の現像ムラ部分拡大

展示方法が貼りっ放しだと、部分部分の荒れ具合に溶け込んで全体から見ればわずかな部分の現像ムラはさほど目立たないとも言える。逆にガラス付きの額装(額をどうするかはさて置き)など整った展示だと、現像ムラや印画紙のヨレも目に付きやすいのかも知れない。

なお、スポンジで拭っている際の印画紙のたるみによる折れジワは、展示してみると全く判らないレベルだった。もちろん無いに越したことはないが。

処理の改善点

処理を行いながら幾つか改善点は思いついたものの、今回は全て同じ方法で行こうとそのまま通しで作業した。以下、もし私にロールプリントの次回があるならばこうやろうというもの。

問題点は大きく2点。場所によって現像液に触れる時間差があることと液ダレが原因の現像ムラ。そして、印画紙が壁に上手く貼り付かないことによる時間のロスと紙の折れジワ。

それらを回避するには、まず最初にシャワーなどで十分に印画紙を濡らして壁にきちんと貼りつけ、現像液塗布時の印画紙の折れや剥がれを回避する。本当に四隅をきちんとめくって引っ張って完全に空気を抜く感じの準備を。

現像液は希釈率を上げて薄くして(中外やイルフォードのもので可能)現像の進行を遅らせ、結果的に濃度差を改善するという方法を考えている。
また印画紙フチの汚染があったので、簡易シャワーでなく停止液も準備、水洗後壁面もきちんと洗うといったところか。まぁ、実際やってみないと何とも言えない部分ではあるが。

乾燥

バライタ印画紙の乾燥は、防虫ネットなど上で乳剤面を下にして行うのがベストだと思うが、ロール紙だと場所の都合でそうもいかない。

省スペースで対応するには、右画像(クリックで拡大表示)のような突っ張りポールとクリップを活用した吊り下げ式が良いだろう。

作業中に突っ張り棒が外れると心が折れるので、以下私が購入したものですが十分な強度のものを。

なお、吊り下げの乾燥では印画紙のカールが強く出る。サイズも大きいので丸まろうとする力も強く、完全に乾くまで放置するとかなり面倒なことになる。

乳剤面がある程度乾燥してくっつかなくなったら早めに回収し、引き伸ばしの露光を行ったスペースで重ね、周辺に写真集などを重しとして置き一晩。
搬入までの数日は、後述するA0サイズの上質紙ボードに挟んで重しをして置いていたが、立てるワケにもいかず生活スペースが非常に制限された。

仕上げの処理

上手く印画紙を乾燥させればある程度平らになるが、プレス機によるフラットニングも出来ればやっておきたい。が、私の持っているプレス機は大四切(11×14インチ)用なので、そもそもロール紙の中心付近にプレートが届かない。
仕方なく、印画紙の周辺をぐるっとプレス。私はやらなかったが、気になるのなら残り部分に当て紙などをしてアイロンでならすという方法もあるだろう。

そして、フラットニング後に印画紙の周辺のカット処理を行った。最終の寸法は85x100cmとあらかじめ決めていたので、メジャーで測ってマーキングしてから裁断。上下は余黒が残らないように左右は合計6cmをカットしたが、写真のトリミングや汚染の出方などを見て3cmと3cmのこともあれば1cmと5cmの場合も。
撮影時の水平の傾きが露光時の印画紙曲がりで更に増幅されてしまったものがあって、1枚だけやむを得ず斜めに切ったが、ここでやらかしてしまうと全てがパーになる。予定と異なるケースがあっても慌てず、慎重の上に慎重な作業を。

また、カットすることによって当然写真のフレーミングも変わる。正直私はちょっと切り過ぎたと言うか、余裕を持って大きく露光し過ぎていたので周辺のイメージがキツキツに。
もちろん作者だから判るレベルであろうが、1mに対して3cmや6cmという裁断は決して小さくないし、当然切らないという選択肢もある。
ただ、切ることによって乾燥で一番紙がヨレている周辺部分が無くなり、かつ黄色い汚染も落とされたので見た目としてはかなり綺麗な印象になったことも付け加えておく。

「ネガの位置決めとピント合わせ」のセクションでも書いたが、逆に意図しない余黒や余白が残ってしまっても困るので、事前の準備と確認の際は本当に何度でも考えていただきたい。


以下、私が実際に購入して使用した処理用品について。定規とカッターはホントおススメ。

シンワの1.25mのカット定規は、手の保護機能は使わなかったが厚みと強度があり滑り止めも非常に効果的でとても使いやすい。長さも1.5mや2mのものも選べる。露光時の印画紙押さえにも活躍した。

オルファ製の黒刃カッターは通常より鋭角に研磨されたもので、切れ味の良さがハッキリ判るレベル。一度カッターを引くだけできちんと切り落とされるというのは、当たり前のことのようだけど非常に重要。カッターマットはA0等が見当たらなかったので若干小さめのA1サイズを購入し、対角線に使用してカット作業を行った。

写真の搬入・展示など

車があれば別だが、大きなサイズの写真を運ぶのもナカナカ神経を使う作業。
私の場合A0サイズ7mm厚の上質紙ボードを2枚購入して、それに挟んで保護用の段ボールを当てて紐掛け。持ち手(肩掛け)部分を上手く作らないと持ち運びはかなりしんどい。

結局、徒歩10分の最寄駅まで運んで心が折れてギャラリーまでタクシーに乗る羽目に。距離(代金)によるが結果的にはタクシーで正解だった。
搬出後に引き取った際は電車で持ち帰ったが、交通機関が空いてる時間を選んでも非常に邪魔になる。残念ながら、こういった邪魔なものにわざとぶつかりたがる人間がいるのも実際のところ。搬入の電車内でダメになりましたなんてシャレにもならないので十二分の注意を。

乳剤面を外側にして緩く巻くという方法も考えたが、圧力による折れの心配があるので結果的には箱を作って保護することになる。乳剤面を外にするのは、自然乾燥のカーリングを打ち消す方向の方がいいかと思って。


展示方法も、額装しようと思うとレンタルフレームなどでは対応できないので、自身で額をオーダーすることになる。貼りっ放しや吊り下げなどなど、出来れば仮に試してみてからプリントに入るくらいがいいのかも。

また、「メディアグリップ」や「ポスタークリップ」といったキーワードで検索すると、スリット状の吊り下げパーツ?と言うか展示に使える用品も見つかります。参考までに。

大サイズのプリントについての戯言

さて。自分が出来た事や出来なかったこと、次回はこうやってやろうと思う目論見まで、私の持ってる知識と経験はほぼほぼ全て書いたと言っていいくらいの前回と今回です。

あ、忘れてましたが、ロール印画紙を1日何枚焼けるか。
KULA PHOTO GALLERYでの写真展でのロール進捗メモは、失敗や焼き直しも含めて8・8・9・3+紙が無くなるまでといった感じ。サイズが大きくても、事前の準備と作業のコツをつかむことで、大全紙と同じくらいの数はプリントできました。

正直、ロール印画紙の暗室作業はまたやりたい。大全紙はギリギリ人間が手元で扱えるか扱えないかのラインだけど、1mになるともう扱えない事が明白で逆にテンションが上がる。これに手を染めると戻れなくなる可能性が薄っすら判る感じ。

何でもデカくすればいいって訳ではないので一旦元に戻るけど、写真と展示するギャラリーとがマッチしたらその時は昇降デスクも買って準備したい。
そして絶対今回よりも上手くやってやんでコノヤロー!と思いながら、工程の記憶をたどりながら記事にしてみた次第です。