イルフォード・マルチグレードフィルターの交換

モノクロ印画紙は、フィルターの交換によって多段階の階調を得られるマルチグレード(MG)のものが主流となって久しい。今回は、その階調をコントロールするフィルターについて。
恐らく最も普及しているのはイルフォード製のものだろう。他社の印画紙を使っていても、フィルターキットはイルフォードを使っているという方も多いようだ。

長く使っていると退色や傷などで交換が必要と言われているが、大きな傷ならともかく買い換える時期というのはナカナカ判断しがたいものがある。
かと言って、劣化できちんとしたコントラストが出ていないのでは?などと考え出してしまうと心配になって精神衛生上よろしくない。

そこでなるべく出費を抑えながらフィルターを交換する方法について、私が先日実践した方法を公開してみます。先に結論を言ってしまえば、枠はそのままに中のシートだけを購入して安く新品への交換を済ませようという内容です。

フィルター交換の手引き

レンズ下への取り付けホルダー等がセットになっているイルフォードのフィルターキットは、量販店でも16,000円を超える価格。印画紙に釣られて値上げされてしまっており、買い換えたくてもちょっと躊躇してしまう。

そもそも劣化しているのか?という疑問

マルチグレードフィルターの新旧比較交換方法の前に、そもそも交換をする必要があるのかという根本的な問題を疑ってみよう。傷が入ったといった場合ならば思い切りも付くが、どの程度で経年劣化するのかというのは情報も無く判断し難い。

右画像(クリックで拡大表示)は、枠付のフィルターが少なくとも15年以上前に購入したもので、シート状の方が先日B&Hから購入した新品。正直、並べて見ても目視では退色などを判別できない。目視で判るほど違うとそれはそれで劣化し過ぎですが…

劣化というのは、保管環境やどの程度プリントしているか(フィルターに光を当てているか)で大きく変わると思うが、私の場合は購入後の推定15年中10年は写真から離れていたので防湿庫で保管。その前後はかなり暗室作業をしているので、トータルで少なくとも3,000枚程度はプリントしているのではないかと思う。

素材が何か判りませんがアセテート?かポリエステル?高温多湿の環境であればカビなどにも注意。また、着色材が水溶性とのことですので、慌てて現像液の中に落とすなんてことが無いように気を付けましょう(私は2~3回やったことが…)。

ベースとなる枠の入手

イルフォード・フィルターキット枠部分引き伸ばしレンズに取り付け出来るホルダー(右画像・クリックで拡大表示)なども必要となるので、暗室用品をこれから揃える場合も一度は全部入りのキットを購入した方が良いだろう。

手先が器用なら自作でも良いのだろうが、使い勝手良く作るのはナカナカの手間。フィルターの交換をする前提でオークションで購入しても良いと思う。
カメラ店で中古の暗室用品を扱っているところは少ないが、経年を判断できないこともあってか2000~4000円程度と安価な価格設定が多く見られる。

また、ホルダーや枠の部分はメーカーによって共通のものを使っているケースも。
マルチグレード印画紙というのは既に数十年の歴史があり、フジやコダック、オリエンタルにケントメア、三菱ゲッコーなど既に印画紙自体が生産完了している物を含めるとフィルターキットは中古市場にも多くある。フィルターの色調などは同一でないものの枠の流用は概ね可能だろう。
ただし、フジのように00号の設定が無い(枠が一つ足りない)場合などもあるので要確認。

なお、現行品であるイルフォードとオリエンタルは、価格には開きがあるが画像を見る限り同じ枠を使用しているようだ。B&Hで購入する場合、イルフォード製の新品は69.95ドル。単体購入で最安送料は14ドル程度の設定がある。

少々余談+情報が古く生産終了の印画紙が多いものの、以下ヒットオンの暗室レポートは各社フィルターと印画紙の描写がテストされているので参考までに。

シートフィルターの購入

イルフォード・マルチグレード3.5インチ角のシートフィルターイルフォード製のフィルターは枠やホルダー付きのキットの他に、引き伸ばしレンズの上側のフィルターポケットに収納して使えるシートタイプのモノが用意されている。

これが交換する中身の部分。昨今フイルムや印画紙は海外通販で購入した方が格段に安い状況だが、このシートフィルターは海外購入でも僅かな価格差。ヨドバシ価格が5,260円でB&Hが27.28ドル(2016年2月現在)。

シートタイプには3種類があり、交換用途は一番小さな8.9cm(3.5インチ)角のもので十二分なサイズ(上画像・クリックで拡大表示)。ちなみにシートセットにはキットに付属する赤フィルターは入っていませんので。

なお、折角購入・交換したばかりなのに1枚だけ傷が入ってしまったといった場合にも、海外では号数ごとにシートフィルターの1枚売りもされている。12インチの大サイズでちょっと割高ですが、万が一の際にはフイルムや印画紙など何か買うついでにというのも良いかと。

分解と交換

フィルター枠の分解フィルター枠は、側面の合わせ目を細身のドライバーなどでこじ開ければ、右画像(クリックで拡大表示)のように簡単に2つに分解することができる。
ただ、一度分解したフィルター枠は外れやすくなり、横からシートがズレ出てしまうこともあるので(新品でも出て来ることが…)、側面を黒のパーマセルテープなどで留めてしまうのが良いだろう。

当然ながら、シートを切る際は写真用手袋などをして指紋が付かないようにご注意を。

私的マルチグレード印画紙のフィルターワーク

何やらフィルターの交換だけではコンテンツとして長さが足りないので、私個人のマルチグレードフィルターの使い方なんぞをざっくりと。
私の場合、使うフィルターと使わないものとがハッキリしていてベース露光は通常2号フィルター。撮影時の条件によって1・1/2号や曇りの場合には2・1/2号といったケースも。

焼き込みはベースのフィルターに加えて、部分的にコントラストを出すのに3・1/2号と5号、空などハイライト部分は00号。毎回全てを使う訳ではなく、最大でもこの4枚しか使用しません。通常は2~3枚というケースが多く、焼き込みの工程もなるべくシンプルに、手数が少なくなるような焼き込み位置を見つけることに時間を使う。

マルチグレードフィルターは全部で12枚。ここは何号で更に別の硬さでとこだわれるのは良いのだが、1/2号フィルターを替えて1秒2秒焼き込んでいたら時間ばかりが過ぎて行く。更には乾燥後にどれがどれだか見分けがつかないといった経験を経て、フィルターを限定して露光は2秒刻みという方法に至った次第です。
いやもちろん、素晴らしいプリントを作ってらっしゃる方は徹底的にこだわって使い分けているのだろうけれど。個人的にはということで。


ヤレヤレ。簡潔にまとめれば10行で終わりそうな内容でしたがそこはそれ。
私自身、フィルターが劣化していて新品に買い替えたらトーンが違って出てしまうのではないか。でもこのまま劣化してるかも知れないモノを使っていて大丈夫なのか…と無駄に悩んでいましたが、結局は買い替えなくても良かったというレベル。ですがそこはそれ2。

手持ちのフィルターに傷が入ったとか、さすがにそろそろ交換時期かな?と思った際にこの方法を思い出していただければと。