イルフォード・オリエンタル等のモノクロ印画紙について

ここ1年ほどで銀塩モノクロ印画紙のラインナップや傾向が大きく変わった感があるので(価格も…)、個人的に多く使用したイルフォードとオリエンタルを中心に感想などをまとめてみました。

なお、私の基準はイルフォードのマルチグレードIV FB 1K(バライタ・純黒調)、現在廃番になってしまった旧モデルです。どうにも違いの判らない男なもので、色調などあくまで個人の印象で厳密な比較という訳ではありません。ハイライトやシャドーなどトーンの出方は好みもあるので各々ご自身で確認してみてください。

イルフォード:値上げと純黒調の消滅

2013年に国内流通で4割前後という大幅な値上げがあったイルフォードの印画紙だが、2014年8月に長く販売されていたマルチグレードIV FB(以降、便宜上「旧イルフォード」と記載)が廃番となり、海外で先行販売されていたFB Classicに置き換わり更なる値上げとなった。

色調が変更されたFB Classic

イルフォードFBクラッシック変更点

単なるパッケージの変更ではなく、FB Classicは感度の高感度化の他、色調が純黒調から若干温黒調になった全く別の印画紙と言っても良い変わり具合(主な変更点は右画像クリックで拡大表示)。
色調は単体で見た場合は気にならないレベルなのだが、純黒調の印画紙と並べてた場合は違いがはっきり判ってしまう。旧イルフォードで焼いていた作品の続きを新しい印画紙でとなると、純黒調・若干温黒調の印画紙が混在することになるので要注意。

また、バライタのクールトーン(冷黒調)の印画紙が国内販売されるようになり、テストしたところ青が強すぎることもなく非常に黒と白が強く感じられた。
私の11月の写真展ではこのクールトーンのバライタ印画紙を大全紙で展示する予定。実物の印象を確かめたい方は、11月25日から新宿ニコンサロンへGO!(←宣伝。改めてこのブログでも告知します)
写真展告知を掲載しました:2014.11.19

なお、現在量販店のWEB通販などでは新タイプ旧タイプの印画紙にクールトーンとウォームトーンが混在する販売形式。
ヨドバシ.comを例にとると、略号の「MG4FB」「マルチグレードIV FB」は同じもので旧タイプ、「MGFB」が若干温黒調になった新しいFB Classic。「MGFBCT」が新しいクールトーンなのでお間違えの無いように。

FB Classicの印象

FBクラッシックも展示を含め多少使ったので個人的な感想を追記しておきます。
色調は先に記載したように単独では全く気にならないし、感覚の部分が大きいけれど旧イルフォードよりシャドーとハイライトの微妙な調子も出しやすくなった感がある。
これは、最大黒濃度が上がったことが実感できる部分かも知れません。

注意すべきは、全体の感度が上がったことに加え、今まで2倍の露光が必要だった4~5号フィルターの感度も上がっていること(「各グレード間のスピードが~」はこれを指す)。スポッティングをする場合純黒調では気持ち色は違うが、マーシャル等で温黒調と純黒調を混ぜると温黒が勝って逆に目立ってしまうので純黒調そのままでいいと思う。

紙自体は若干クラシックの方がテクスチャが強く出るようにも感じますが、これも厳密な比較ではなく印象レベルのものです。

イルフォードのバライタ印画紙おススメ購入方法

国内流通の大幅な値上げがあって購入し辛くなったイルフォードですが、価格の安い海外のお店から直接購入するという方法があります。

送料が結構かかるので量を使う方向けとなってしまいますが、国内では取り扱いの無い大四つ切(11×14インチ)の250枚入りや、小全紙(16×20インチ)・大全紙(20×24インチ)の50枚入りなどのお得パック?は送料を含めてもかなり安く購入出来ます。

私が主に利用しているのはアメリカの「B&H」という有名なお店で、英語(ローマ字)で住所とクレジットカードの登録をすればいいだけですのでさほど敷居は高くありません。
参考までにヨドバシカメラなど国内量販店の価格は、バライタ印画紙の大四つ切50枚で16,090円、5箱購入して250枚だと80,450円。
B&Hで250枚入りの商品(以下リンク)は$374.95で、送料$139.40が掛かりますので円相場にもよりますが55,000円前後とかなり安く購入することが出来ます。

※価格・送料は2014年9月末時点のものです。

海外通販はひと手間掛けて安心を

以前海外通販で大全紙を購入した際に、外段ボールの中にエアパッキンも何も無しに印画紙の箱が入っていて、輸送時に角が潰れ印画紙自体に影響が出たことがありました。

貼りっ放しの展示なら致命傷になることも考えられますので、大サイズの印画紙を注文する際は「輸送時に印画紙の角が潰れないように保護してください」とメッセージ記入欄などに書いた方が良いと思います。

前出のB&Hは注文時に通信欄がありませんが、注文後に問い合わせフォームから注文番号を書いて送ったところ、長めのダンボールで角を保護したしっかり梱包で発送してくれました。
英語が判らなくても(私も判りません)Google翻訳の簡潔なメッセージで大丈夫ですので、これは是非やってみて下さい。

オリエンタル:ニューシーガルが密かに変更?

バライタ印画紙を生産している国内最後の一社オリエンタル(サイバーグラフィックス社)ですが、今年5月頃にニューシーガルの印画紙がしばらく在庫切れになることがあり、生産が再開されて以降印画紙の調子が変わったという意見を多く聞くようになった。

先日、4月に入手した旧ロットに続けて新しいロットの印画紙を使って、黒が全く違うことに唖然。
旧ロットは旧イルフォードと混ぜても違和感の無い純黒調だったのが、やや温黒調と言うか黄緑色掛かった温黒調になってしまっていて、同じ日に同じ現像液で旧→新と続けて焼いてこの違いは、乳剤や製造方法に変更があったと考えるのが普通ではないだろうか。

購入元の量販店で確認したところニューシーガルの購入者から変更に関する問い合わせは多いようで、店員の方がわざわざその場でメーカーに確認してくれたが「仕様」だそうだ。
仕様変更の告知は無いが、私の周りの何人かの愛用者も総じて以前のものと変わったという印象を持っているようだ。仕様が変わるのはコスト面などで仕方が無いと思うが、変更があったならそれを告知してくれないと購入する側は戸惑うばかりなのだが。

これによって、現像液の違いやオリエンタルのイーグル(ニューシーガルの下位ラインナップ)、他にフォマやベルゲール等はあるにしても、普通の純黒調を入手するのが面倒という由々しき事態に。

不安定さはロットの問題?

以前、印画紙の製造・販売に関わっている方から聞いたお話では、1ロットを製造する間にどうしても若干の違いは発生するそうであり、今回のニューシーガルは製造時のバラつきが大きかったのではないかということだった。

とある量販店では「このニューシーガルのバライタは4号5号のフィルターでコントラストが出ない場合があります云々」という手書きのポップが置かれていたのも見たことがあり、今回のロットが不安定だったのは間違いないにしろ乳剤自体が変更されたのかは次回を試してみないと何とも言えないのかも知れない。

モデルチェンジと海外版

国内販売のニューシーガルは2015年6月に、バライタ印画紙のみVC-FBIII Advance(アドバンス)にリニューアルされた。アサヒカメラ.netに赤城耕一氏によるテストレポートが掲載されているので参考に。やや硬調な純黒調ということのようだ。

また、海外では依然としてVC-FBIIが販売されており、バライタには純黒調はなくクールトーンとウォームトーンのラインナップ。この辺はどういった仕組みなのだろうか。FBIIIの一時の不安定さから、海外版を購入している方も。

RCペーパー選びの参考に

バライタ印画紙の話ばかりになったが、RCペーパーもワークショップ用の下焼きでイルフォード、フジ、オリエンタルといくつか使ってきたので雑感を。

価格面ではオリエンタルのイーグルと、RCのみ継続販売しているフジが最も安く買える。
四つ切(10×12インチ)や半切(14×17インチ)・全紙(18×22インチ)といった、日本サイズの印画紙を販売しているのもこの2ブランドだけとなってしまった。

モノクロプリントを始めて以来ずっと使ってきたイルフォードだが、RCペーパーも値上げになってしまったためナカナカ買い辛い。
私は現在、RCはオリエンタルのニューシーガルを使用しているが、調子に関してはイルフォード、フジ、ニューシーガルは大差ないくらいの印象(RCであまり調子を気にしていないので…)

ただ、オリエンタルのイーグルだけは感度が高めで、やや硬調なプリントに仕上がる。
下に掲載の画像は、イーグルとイルフォードを2号フィルターで中間調がほぼ同じ濃度になる様にプリントした比較画像だが、下側のアスファルトの描写、空の濃度、右上の斜めになった屋根など描写の違いが判るかと思う。

イーグルのバライタ印画紙はテストしていないが、RCとバライタで感度や調子が揃っているならRCで仮焼きをして同じ銘柄のバライタで本番プリントと行けるので選択肢として悪くないのではないか。

左:オリエンタル・イーグル、右:イルフォードMG RC比較

(左:イーグル 右:イルフォード クリックで拡大表示)

余談だが、フジの印画紙は安くていいものの50枚や100枚入りというラインナップが無く、印画紙が「箱」ではなく「袋」入りなのがネック。細かいことのようだが、焼いた写真を保管しておくのにフジの「薄い袋」は不適なのだ。焼く枚数が多くなると、空き箱のありがたみが身に染みるのです。