写真関連書籍のおススメ
写真とは何ぞや?良い写真って何かね?という、答えの無い問いは謎を生む堂々巡りの回廊で、結局は自分自身で掴むしかないのは当然にしても、何か手掛かり足掛かりを欲して、写真家について調べたり写真関係の本を読む人もある。
そこで今回は、「写真についての本」を雑多に何冊か取り上げみます。書評なんてものではなく選ぶ手掛かりの紹介文に加えていつもの寝言です。予備知識が無くても読めて楽しめるものを中心に写真論といったものも少々。
20~50年以上前の書籍もありますが古書での入手が可能ですし、ハードについての話ではないので内容が古くなるということも比較的少ない。私が購入して読んだものという限られた範囲でのピックアップですが、各々を再読したりして選んでみました。
「○○の撮り方」や「××写真の教科書」といったいわゆるMook・Howto本は掲載していませんが、写真集や暗室、展示などに関連するものは後段に幾つか。写真集自体については「WEBでの写真集の探し方」や「写真集についての幾つかの戯言」の記事がありますのでぜひ。
手前味噌の前者は、今回紹介する書籍の古書を探す場合も参考になるかと思います。
なお、サムネイル画像とリンクからAmazonで販売されている当該商品を確認できますのでAmazonでのレビューなども参考に。
写真について
ざっくりとした並び順ですが、下に行くほど専門的になったり写真家関連の予備知識や実際に撮影していての行き詰まり?が必要だったりするかも知れません。
当初は写真論も何冊か…と思ったのですが、写真評論の紹介を書くというのが圧倒的にしんどいのでほぼ無しにして、後段に代表的なものをまとめました。
写真論と言っても、平易な分りやすいものから写真家の履歴紹介が中心だったり、私の頭では何を仰ってるのか理解できません…という哲学的なものからヨコモジonパレードまで千差万別。そもそも何をもってして「写真論」とするかというのも曖昧なものではあります。
「写真」のはなし – 染谷學・大西みつぐ・築地仁著
三人の写真家(染谷學・大西みつぐ・築地仁各氏)が、写真作品って何?何が作品なの?といった内容を平易な文章で綴っている。フォトコン誌でのそれぞれの連載をまとめたものなので、各章が簡潔にまとめられていて非常に読みやすい。
位置付けとしては写真作品入門書籍ではあるが、アマチュア写真の多くを占める風景写真についてや、どこかで見たことのある写真をなぞる行為、写真の予定調和や被災地で撮影することの意味。写真に写るのはモノだけであるということなどなど、三者三様にナカナカ雑誌の連載では言い辛かったであろう事にも丁寧に言及されている。
見方や考え方の手掛かりとして非常に判りやすいのは、全員が写真学校で指導していた方々というのも関係するだろうか。
こういったコンテンツを外に向けて語ることこそが、写真の見方やすそ野を広げるんじゃないのかなと思ったり。これから、という方に非常におススメ。
- 「写真」のはなし
染谷學・大西みつぐ・築地仁著 2014年 日本写真企画
鵜の目鷹の目 – 赤瀬川原平著
中古カメラ関連の著作も多い赤瀬川原平氏が、1枚の写真に写っているモノを観察し状況を読み解き想像・妄想?しながら、軽妙な文章で写真を読んでゆくという内容。
昔はただ面白い本だと思っていましたが、写真を見る・見つめる・読み解くということに専門外から一石を投じた名著。赤瀬川氏が亡くなられた後に、追悼として日本カメラ誌に再連載もされた名作。
取り上げられている作品もアジェやスタンフェルド、木村伊兵衛など国内外の大御所から当時中堅?の作家まで、作家や作品を楽しみながら知ることもできます。
しかし、モノがたくさん写ってる写真はこんな風に楽しめるんだからやっぱりいいなぁ…と。
唯一非常に小さな難点は、雑誌連載(リアルタイムで読んでた)時は見開きで写真を参照しながら文章を読めたが、単行本だとページを戻って写真を見る必要があること。これは致し方ないかな…
- 鵜の目鷹の目
赤瀬川原平著 1994年 日本カメラ社
写真家のコンタクト探検 – 松本徳彦著
副題は「一枚の名作はどう選ばれたか」。写真家の有名な作品が含まれるコンタクトシート(ベタ焼き)を取り上げ、その前後に写真家が何に注目しどんな動きをしていたのかを検証していくもの(一点だけ、戦争写真で生々しいものがあるので苦手な方は注意)。
セレクトされた写真とそのベタ焼きといった構成で、当該作家の紹介や本人へのインタビューも含めた内容。作家の略歴や注釈もあるため予備知識が無くとも楽しめる。
取り上げられている作家は、木村伊兵衛・土門拳・植田正治から高梨豊・森山大道の世代まで国内の大御所がずらり36名。
撮った中からいいカットを選んで発表するからこそ写真家は写真家たり得るのだろうが、ベタ焼きを見るというのはある種の覗き見的な面白さもあるので、こういった企画を現代の作家の方でもやって欲しいなぁと思ったりもします。
- 写真家のコンタクト探検
松本徳彦著 1996年 平凡社
藝術写真捏造博覧会 – 久門易著
素晴らしき奇書とでも言いましょうか、著名な写真家24名の有名作品を著者が真似して撮ることによってゲイジュツ写真の謎に迫るというもの。元は日本カメラ誌での連載。
真似ると言っても、タイトルに「捏造」とある通り綺麗に模倣する訳ではなく、随所に著者である久門易氏の悪ふざけと博識が込められ、ちょっと理屈っぽさと皮肉はあるものの自身の逡巡も含めた率直なコンテンツ。
その中で、「芸術」をキーワードとしながら作家の個性や界隈の潮流などを考察してゆく真面目な?内容。
テキストへの注釈や各章最後の模倣顛末記、巻末のお手本とした写真家の紹介も著者の手で書かれており抜かりない。お手本の写真家は定番の大御所以外にも、著者が東京綜合写真専門学校出身ということもあってか土田ヒロミ、鈴木清、谷口雅各氏なども。
- 藝術写真捏造博覧会
久門易著 1995年 情報センター出版局
たのしい写真―よい子のための写真教室 – ホンマタカシ著
ちょっと人を喰ったタイトルではあるが、写真家のホンマタカシ氏による写真講義本。
写真の歴史に始まり、決定的瞬間といわゆるニュカラー、ポストモダンについての解説を代表的な作家の作品や対談などを盛り込みながら紹介している。ワークショップ篇からは、写真を真似ることや制約するなどの「行為」によって導かれる写真について実践のヒント。
最終盤は、全くもって意味も意図も判りかねるテキストが散見されるのがちょっと何ですが…
一応。著名な写真家ゆえか、この本に対する熱狂的な反論なども散見されます。何でもそうですが本に書いてあるから正だの誤だのという話でもありませんので、最初の手掛かりとして有意な書籍だとは思います。
- たのしい写真―よい子のための写真教室
ホンマタカシ著 2009年 平凡社
漸進快楽写真家 – 金村修著
都市をモノクロームで撮り続けている、写真家・金村修氏の自伝的エッセイ。「漸進」は「ぜんしん」と読みます。
飾らず読みやすい文章で、自身が影響を受けた写真家や映像、出来事等にも多く触れられており、写真についての考え方やモノの見方、撮影の手法から展示についての考えまで惜しみ無く書かれている。
多分誰だって確信なんて無いのだけれど、それでも続けて行くという強度について。そして虚無と熱量の往復に思いを巡らせます。
金村氏は長く写真学校での指導や個人で写真ワークショップを開催されており、私はこの本を「写真を続ける者への遠回しのエール」と勝手に解釈しています。
こういった読ませる文章以外にも、金村氏のワークショップサイトや展示での模様のような長文など、テキストに対する考えや使い分けも非常に巧み。
かつての日本カメラ誌での連載や、2016年から家電批評誌で執筆されている写真批評の文章などをまとめて書籍化されないだろうか。出して欲しいなぁ。絶対買いますけど。
- 漸進快楽写真家
金村修著 2009年 同友館
写真ノート – 大辻清司著
写真教育者として、高梨豊、畠山直哉、牛腸茂雄各氏など広く影響を与えた大辻清司氏のアサヒカメラ誌での連載をまとめたもの。
基本的にはエッセイの様相なので文章は非常に平易で解りすく、前章をついで話が展開されてゆくことも多い。子供の頃の記憶から自身を紐解いて興味や関心を探ったり、教育者としての心掛けや教育現場での実際など話題は多彩。
現在でも曖昧に発せられることの多い「よい写真」や「写真の味」、「わからないから面白い」といった事柄にもそれは何処から来ているのかを丁寧に掘り下げ考証している。
巻末には大辻氏の代表的な作品16点を掲載。
ネックなのは、古書価格が手頃でない場合が多いこと。こういった素晴らしい本は、再販なり電子書籍化が出来ないものなのだろうか。
なお全くの余談ですが、本書を古書で購入した際、本の間にオリジナルと思われる謹呈のしおりと大辻氏の学校?の出席カードなどが入っていたので下に載せておきます。
- 写真ノート
大辻清司著 1989年 美術出版社
写真の読みかた – 名取洋之助著
本書の出版は今から50年以上前なのだが、写真書籍の中では名作のひとつと数えられることも多い。
曖昧な記号性を持つ写真というものが、様々な媒体の中でどういった意図で編集され扱われたかなどを、言葉(キャプション)による誘導や関係性、ファミリー・オブ・マン写真展や名取洋之助氏自身が関わったアメリカのライフ誌などの実例を元に解説されている。
中盤からは自伝的な章で、渡欧からライフ誌での活動や当時の海外から日本への興味、写真エージェンシーの日本工房の設立についても述べられている。著者没後の出版ゆえか、最後の四章は名取洋之助という人物を掘り下げるためのテキスト。ごめんなさい。私は最後飛ばしました。
- 写真の読みかた
名取洋之助著 1963年 岩波書店
出来事と写真 – 畠山直哉・大竹昭子著
写真家・畠山直哉氏と評論家の大竹昭子氏との複数回の対談を元に構成されたもの。
2011年の東日本大震災によって肉親と実家を失った畠山氏が、その出来事の内側に身を置かざるを得なくなってからの、撮ることへの逡巡や過去の作品、美についての意識などが対話を通して語られている。
何か余計な説明を書いても仕方ありませんが、近年で私にとって一番重要な内容かもな…と思った本ではあります。
他に、畠山氏の著作はトークイベントや講義の内容をまとめた「話す写真」があり、一つの作品がどのようなきっかけで始まり、試行錯誤の中で形になって行ったかなどが詳細に語られている。
当然編集はされているにしても、元はトークでありながら話のまとまりや起承転結の流れにほとほと感心します。
- 出来事と写真
畠山直哉・大竹昭子著 2016年 赤々舎
- 話す写真 見えないものに向かって
畠山直哉著 2010年 小学館
ライカな眼 – 高梨豊著
写真家・高梨豊氏の解体新書とも言うべき半生記。編集は、現在写真評論家として活躍されているタカザワケンジ氏。文中のカメラの機種や作家名、高梨氏の作品などは欄外に注釈が入っており、予備知識無しでも十分楽しめるような構成だ。
前半が少年時代からプロヴォーグを含む作家としての活動に関する語り下し4割、中盤に愛用のライカレンズの紹介や撮影ノートの公開、モノクロプリントに対する考え方などを挟んで、後半に荒木経惟氏や赤瀬川原平氏らとの対談の収録が4割といった内容。
作品に対する考え方や手法なども詳細に語られており、一人の作家をここまで多方面から掘り下げた書籍というのも珍しい。後半の対談は読み物として非常に面白い。
出版はライカ同盟全盛、写真集は私も非常に好きな「地名論」の頃で、ブームになっていたレンジファインダーのMook本などにも登場されていたなぁ。
- ライカな眼
高梨豊著 2002年 毎日コミュニケーションズ
PhotoGraphica
かつて発行されていた写真雑誌のひとつがPhotoGraphica。2005年に創刊し、季刊誌の形態で2011年に休刊となったようだ。
内容は写真家やテーマの特集を中心に写真集や書籍のレビュー、インタビューや対談など多彩なコンテンツ構成。マニアックなジャンルの連載やコラム、時にはカメラのミニ特集もあったり。
古書で入手する場合は、好きな作家やテーマの特集を手掛かりとすると良いだろう。個人的にはある種の理想形だろうなと思う写真雑誌だ。
カメラ雑誌はあるけれど、写真雑誌は続かないというニュアンスのことは時々聞かれる話題であるが、写真評論家の飯沢耕太郎氏が編集を務めた「deja-vu(デジャヴュ)」も1990年から95年の20号で休刊となっている。
現在ではフォトストックで有名なアマナが実地を含め展開しているIMAという雑誌があるが、こちらは前出二誌の路線とは大きく違い非常にアート寄り?な印象。時代がそうなのかも知れないが。
- PhotoGraphica一覧
インプレスコミュニケーションズ
- deja-vu(デジャヴュ)一覧
明るい部屋―写真についての覚書 – ロラン・バルト著
写真論や講評・批評の中で引き合いに出されることも多い、定番の名著ロラン・バルト「明るい部屋」。あまりに有名過ぎて私が紹介文を書いてもしょうがないような気が…
本書で様々な例をもって語られた「ストゥディウム」と「プンクトゥム」という2つの言葉は、現在でもそこそこな頻度で見かけることになるかと思います。↓こんな感じです(丸投げ)。
ストゥディウム/プンクトゥム | 現代美術用語辞典
写真を見る側からの論考で、結構概念の話になって来るので判り易くはないのですが読みやすくはあります。
私も遅まきながら読んでみて、かつて見聞きしたあの話やこういった写真の見方考え方は、バルトのこの部分をベースにしているのかと思い至ることも多々あって、いかに写真界隈の共通書になっているかを思い知った次第です。
- 明るい部屋―写真についての覚書
ロラン・バルト著 1985年 みすず書房
定番(と思われる)写真論
先に掲載したロラン・バルト「明るい部屋」や名取洋之助の「写真の読みかた」などは、写真にちょっと入りこむと至る所で言及されてたり引用されたりという定番(であろうと私が勝手に思っている)書籍。比較的古めな名著・名作とでも言いましょうか。
ジャンルや影響下によって「定番」も大きく変わりそうですが、それ以外にぱっと思いついたものだけで何ですが一覧にしてみます。
- 写真論(スーザン・ソンタグ)
- 複製技術時代の芸術(ヴァルター・ベンヤミン)
- 写真に帰れ―伊奈信男写真論集(伊奈信男)
- 写真芸術論(重森弘淹)
- なぜ、植物図鑑か―中平卓馬映像論集(中平卓馬)
- 決闘写真論(篠山紀信・中平卓馬)
新しめのところでは以下のものを見聞きすることが多い印象です。
- 現代写真論 新版(シャーロット・コットン)
- 写真論/絵画論(ゲルハルト・リヒター)
- 写真講義(ルイジ・ギッリ)
- 写真の本質(スティーヴン・ショアー)
- ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読(多木浩二)
- 新版写真のワナ(新藤健一)
他にはカメラ毎日の編集長として活躍された西井一夫氏や、現在進行形の写真評論家としては、大竹昭子氏や清水穣氏が有名ですが、著作が多かったりで私も何冊か読んだ程度なのでリンク先は著作一覧でお茶を濁します。
この章のピックアップは私も全部読んだことがある訳ではありませんし、写真研究家や評論家になって天下を取りたいというのでなければ読むことが必須でもないでしょう。著作(日本語訳)が無くても、キュレーターや編集者で目にする頻度の高い方々も多く、掘って行けば広大な沼かと思います。
写真の周辺をさらっと
明るい暗室 – 久門易著
そもそも暗室って何?という所から始まって、特性曲線の解説からカラープリントまでを網羅する入門書。後に「暗室完全マスターHandBook」として、内容を若干改定したものが発売された。
基本的には入門書ながら、汎用の液温計は液温に誤差があることやイーゼルを傾けてパースを補正するテクニック、ロール紙でのプリントの実際など、著者の経験から来るノウハウも詰まった盛り沢山な内容。A5判ながら情報量は非常に多い。
暗室の入門書は新旧取り混ぜ非常に多く、既に枯れた(熟成した・新しいものが無い)技術なのでこの本でなくては…ということは無いけれど、かつて私が写真学校で写真を学んだ折に購入した中の一冊ゆえピックアップしました。20℃という液温をきっちり守らなくたって暗室はできるといった書きっぷりに、ずいぶん安堵した記憶があります。
- 明るい暗室
久門易著 1993年 学研
- 暗室完全マスターHandBook
久門易著 1996年 学研
写真展を開く! – 篠原俊之著
写真展を開催する為に、どう準備し実践してゆくかという内容の書籍。東京の四谷(現在は小伝馬町に移転)でギャラリーを主宰している著者のノウハウが実例を交え詳細に解説されている。
写真展開催へのタイムスケジュールや予算、案内用のダイレクトメールの作成、額装の方法から写真を展示する高さについてなどなど、未経験の場合はその時点になって初めて気付くことを先回りして把握・検討できる。
写真のセレクト方法やメインの壁の作り方などは、周りに相談できる人のいない環境で写真をやっている人には大いに参考になるのではないか。
唯一、章と章の間に関係する方々の写真作品がかなりの量掲載されていて、本文と関係が無いため読む流れが分断されしまうのが非常に気になる。作品も見える形で実際の展示風景を載せたりとかもう一工夫して欲しかった。
- 写真展を開く!―「写真の学校」
篠原俊之著 2011年 雷鳥社
Celebrating The Negative – John Loengard著
つい最近SNSで見て興味を持った、名作写真のネガを写したという珍しいコンセプト本。今回唯一の洋書です。
ブレッソンにキャパ、エドワード・ウェストンやマーガレット・バークホワイトなどの名作写真のネガが、紹介文などと共に見開き1作家で掲載されている。
あの写真にもネガがあって、誰かが(作家本人とは限らない)今とそう変わらない手法でプリントを作ったのかと当たり前のことを改めて思うと共に、原版のサイズからネガの濃度やコントラスト、時にはフイルムの銘柄まで読める情報は結構多い。
表に出ない写真のプロセスの一つである(あった?)ネガというのは、先のベタ焼きと同じく純粋に興味の対象として面白い。
ただ、ライトボックス上のネガを保持する(必要の無い)手が非常に大きく写り込んでいて、時にはネガの後ろにがっつり手が入っていてかなりうるさい。一体何の主張かと…。もっと画面いっぱいに、同じ手法で淡々とネガを見せることに注力した記録だったら良かったのにと極小の物足りなさは残る。
- Celebrating the Negative
John Loengard著 1994年 Arcade Publishing
写真集をよむ ベスト338完全ガイド
徹底的に写真集を紹介するという希有な書籍。
前段部分には、写真家・写真評論家らの「写真集をよむ」ことをテーマとしたテキストを掲載。荒木経惟氏の「センチメンタルな旅」を全ページ掲載し、飯沢耕太郎氏が写真集の流れを解説していたりも。
内容の半分以上が写真集の和書・洋書300冊以上の紹介であり、1ページに4冊を掲載し短いテキストが付く。情報量が膨大なので、紹介文の文字は若干小さめ。
古い書籍ですが、ネット時代の今こそ気になった写真集から検索で作家について調べてみるという使い方が出来て有意かも知れません。2000年に刊行された2でも構成はほぼ同じで、掲載されている写真集の和書:洋書の比率が1では2:1程度だったのが、2は逆転し1:2となっている。
- 写真集をよむ ベスト338完全ガイド
1997年 メタローグ
- 写真集をよむ〈2〉ベスト338完全ガイド
2000年 メタローグ
日本写真集史 1956-1986 – 金子隆一ほか著
写真集コレクターでもある著者の金子隆一氏の蔵書から、名作の写真集をピックアップして紹介した大判書籍。
写真集の解説だけではなく、写真集自体を見開きで丁寧に複写してその内容を一部掲載している。古書でもとても手が出ない高値で取引されている写真集も多く掲載されており、日本写真の隆盛期を知る非常に詳細な資料となっている。
写真集の紹介は、デザイン担当やサイズなどの他に、装幀や印刷方法・印刷所といった情報まで掲載されているのが非常にマニアックな…。
- 日本写真集史 1956-1986
金子隆一ほか著 2009年 赤々舎
本についての戯言
書籍に限らず、何かのおススメを書くというのは意外と底が割れる。好きな写真家や写真集といった話もその類かも知れない。内容の話や紹介文まで書くと更に薄さがよく判るってなもんで…ヤレヤレ。
私自身が1994年に本格的に写真を始めたのでその頃の書籍が多く、2000年頃から10年近く空白期間があったのでその年代は紹介できるものも少ない。
実家に置きっ放しの本も多いので、期を見てちょこちょこ追加するかも知れません。
で、真面目な話。昔は難しい本をきちんと読めたんだけど最近は強烈な睡魔に襲われる。視力はいいんだけど若干老眼化してきたし。何が言いたいかというと、本は若いうちに読んだ方がいいよという事。いやホントに。
…いや、嘘だな。私が20代に読んだ本の中身なんて大体は忘れてる。そして何より、経験値の上でしか本質的に理解できないことはたくさんある。今回何冊かを再読してみて、経験値が上がったなんて思わないけど無駄に年をとったか無闇にシャッターを切ったゆえ理解できることは多々あった(のではなかろうか)。
よくわからん。けど、いいなと思った本はすぐに手放さないで置いておくと良いかもね。写真集と合わせて床が抜けないようには注意だけれど。
しかし、本だけ読んでも写真は上手くならない代表にならないように精進せねばと思う次第です。