写真家が主宰する写真ワークショップ

「写真は教えることが出来ない」などともっともらしく語られることもありますが、写真教育(という言葉が適切かはさておき)の場として大学の写真学科や写真専門学校の他に、写真家が主催するワークショップというものがある。
カリキュラムに沿って手を動かすものや、作品講評を中心とするところなどスタイルは様々。その「写真家によるワークショップ」というものの一端をまとめてみました。

私もすべて把握しているわけではないのでできるだけ客観的にまとめていますが、会期や料金、開催内容等は必ずリンク先の当該サイトでご確認ください。
また、写真ギャラリーを開催場所としている場合が多いため、会場の項目にギャラリー名を記載してあります。いずれも東京での開催となってしまうのは致し方の無いところ…

なお、紹介するワークショップはフイルム・デジタルを問わない写真作品検討型(講評式?)のものがほとんどですが、モノクロプリントや大判カメラ等、狭く深くに特化したワークショップも多く開催されています。

2017年になって著名な写真家の方が立て続けにワークショップを開講し、場所や曜日、方法などの選択肢も広くなっている。

最終更新:2017/07/31

主な写真家主宰のワークショップ

金村修ワークショップ

日本を代表する写真家であり、一貫した写真表現でファンも多い金村修氏のワークショップ。
講師は金村氏の他、写真評論家のタカザワケンジ氏、写真家の小松浩子氏で、作品の講評を中心とした形態。およそ2か月間の10週が一期となり、年四期の開催。
講師それぞれが写真的に同じ方向を向いているので、写真単体の質から構成・展示方法、映像や現代美術の観点など幅広い知見から講評を受けられる。
また、金村氏の写真展に合わせて単発のワークショップが開催されることもあるので、どういった講評を受けられるのかの参考に参加してみるのも良いと思う。

会場:千代田区猿楽町(The White)
曜日・時間:毎週月曜日18:30~
会期:全10回
会費:35,000円

夜の写真学校(瀬戸正人)

木村伊兵衛賞受賞作家であり、過去には同賞の選考委員も務めた瀬戸正人氏が主宰。写真家の大野伸彦氏も講評に参加。ゲストによる講評等も随時行われる。
他のワークショップと異なるのは写真のある時に参加すればよいというスタイルで、2年間という長めの在籍期限中に修了し、Place Mでのワークショップ修了個展開催を目標としている。
また、基本的には自身がセレクトしたものを見てもらうのではなく、撮ったものを全て瀬戸氏がチェックし「何を選ぶのか」というセレクトの段階から指導を受けられるのが特徴的。

会場:新宿区新宿(Place M)
曜日・時間:毎週土曜日 19:00~(時間外あり)
会期:2年間在籍可
会費:80,000円

ワークショップ2B(渡部さとる)

写真集出版やカメラ関連の著作も多い渡部さとる氏が主宰する、写真を基礎から学ぶワークショップ。カリキュラムに沿って露出とは何かというところから始まるので、これから写真をやってみたいという人に対応している。経験者にとっても基礎から見直す作業はとても大切。
実習では原則フイルムカメラを使用し、モノクロ・カラープリントの実習まで網羅。カメラ機材や暗室の貸出サポートなどもあり、修了展やOB展などの写真展開催も多く非常に連帯感のあるワークショップという印象。

会場:中野区江古田
曜日・時間:土曜日(午前・午後)、日曜日(午前)のいずれか
会期:全13回
会費:5000円/1回(税別)

北島敬三 WORKSHOP 写真塾

2017年5月に開講した一対一の作品検討式のワークショップ。講師は、国内の各賞受賞歴や選考委員なども務める北島敬三氏で、不定期にキュレーターや写真家のゲスト講師を迎えてのグループ講評も行われる模様。
北島氏自身、かつて森山大道氏のワークショップに参加していた方でもある。
およそ1時間程度のマンツーマン式のため、日程を「4ヶ月間の内で5回」というワクの中で相談して決められるので、撮影のペースや仕事の状況等で悩まなくていいのも大きなメリット。

会場:新宿区新宿(photographers’ gallery)
曜日・時間:受講者との相談で個別に設定
会期:4ヶ月間内で5回
会費:32,400円(税込)

渡辺兼人写真ワークショップ

小説と写真で構成される「既視の街」で木村伊兵衛写真賞を受賞し、東京綜合写真専門学校にて長く写真教育に携わる写真家の渡辺兼人氏が主宰する作品講評ワークショップ。
2017年9月から開講され、年4期の継続開催となる模様。2017年7月末現在、webサイト等は無くtwitterアカウントで問い合わせや申し込みのアドレスが公開されている。
日曜開催がメインとなるようなので、日曜休みの社会人の方も通いやすさがあるだろう。

会場:千代田区日比谷公園(日比谷図書文化館)
曜日・時間:日曜日14:30~ 他、平日夜の場合もあり
会期:3ヶ月間で6回
会費:30,000円(税込)

291 workshop(福居伸宏)

写真家の福居伸宏氏が主宰。参加者の作品検討の他に、福居氏の選定した写真集や写真文献を用いた議論が行われる点が特徴。過去の名作を紐解き、咀嚼するという作業は自身で作品を作って行く上で非常に重要。先生(講師)と生徒という図式ではなく、参加者と対等の立場で一緒に写真を考えて行くというスタンスで運営されているとのこと。
個人講座の設定もあり、こちらは場所や時間・内容等も相談の上で決められるようだ。

会場:江東区三好(TAP Gallery)
曜日・時間:毎週水曜日 19:00~
会期:全10回+補講
会費:35,000円(学生・継続30,000円)

フォトワークショップ Persona Grata(水谷幹治)

20年来、写真展開催・写真集出版を主に活動されている写真家の水谷幹治氏が主宰するワークショップ。水谷氏も森山大道ワークショップ出身とのことで、ギャラリーPLACE Mの運営にも長く携わっていた。
本ワークショップの会場は新宿のギャラリー蒼穹舎。途中参加や見学なども可能なようだ。

会場:新宿区新宿(蒼穹舎)
曜日・時間:毎週土曜日 19:00~
会期:10回(4ヶ月)
会費:30,000円(延長時 25,000円)

その他の写真家主宰ワークショップ

掲載以外にも写真家主宰のワークショップは多くあるようなのですが、継続情報が全く無く状況が分からない場合がほとんど。
ゆえ、かつて掲載していたリンク一覧は削除し、過去に開催されていた一覧に変更しましたのでご自身で検索などしてみてください。

  • ワークショップKAIDO塾(尾仲浩二)
  • 写真 WORKSHOP(普後均)
  • 写真教室のような会(富谷昌子)
  • 東京銀塩写真クラブ(田村彰英)

写真ワークショップの選び方

ワークショップを選ぶ際に、社会人の方なら参加できる日時かどうかが第一になるかと思います。次に通いやすい立地や金銭面などなど。
仕事で開始時間までに行けないから…と逡巡する必要はあまり無いかと。作品講評形式の場合は、途中参加でも問題無いケースの方が多いと思いますので主催者に相談・確認を。

極論ですが、結局写真は好みです。もちろん作品としてのレベル等はあるにしても、私はどうしても好み(趣向・考え方・方向性)というものは避けて通れないと思っています。
事前見学が可能なワークショップは申し込んで実際に講義を聞いてみたり、卒業・修了生の方の写真展などに行って話を聞いてみるのも良いかと思います。講師の方の意見と自分の意見(好み)が合うかも選択の指針の一つだと思うからです。

ただし実際に参加したなら、まず講師の方より自分の方が知見が劣っているということをしっかり認識しなくてはいけません。最初から、「自分はいいと思うのにあの人は認めてくれない」ではワークショップに通う意味がなくなりますので、そこは謙虚に「そういう見方もあるのか」と1つに固執せず色々な方法を実践してみましょう。
他の参加者の写真を見て講評を聞くことも写真を考える上で非常に役立つことです。

写真家のワークショップに通うとその人の色に染められてしまうという意見もあるようです。
写真家個人に指導を受けるのですから一面ではその通りかも知れませんが、その人のやりたい方向をより伸ばすことが出来る指導者は多くいらっしゃいますので、さほど気にする必要は無いでしょう。

また、ワークショップは誰でも(極端な話私だって)開催できるため、言葉は悪いですがMOOK本の作例写真にいかに似せるかというレベルのワークショップもあります。それが悪いことではありませんが、自身が写真で何をしたいのか、その為にはどういった所に行くのが良いのかはしっかり意識する必要があると思います。
写真家のワークショップは敷居が高そうと思ってしまいがちですが、結局は講師の方がどれくらい写真を見ているか知っているか考えているかが全てと言っても良いと思いますので、作品を作りたいと強く思うのなら幅広く活動をしている写真家の主宰するところがお勧めです。

写真家・評論家の方に作品を見てもらう方法にはポートフォリオレビューもありますが、基本的には初見の作品を出会いがしらでの講評となってしまいます。
ワークショップの良さは、作者の意図やこれまでの経過を汲んで、やりたいと思っていることを継続して見てもらえることにあると思います。

最後に

講評形式のワークショップの多くは、作品として完成されているものを持って来てくださいということではなく、そこから写真を作品にして行きましょうというスタンスのところがほとんどです。
合評形式であれば、自分の写真が無くても見学として他の人の写真や言われてる事から学ぶことも可能です。

ただし、当然ながら人前で自分の写真を見せることになります。もしかしたらみんなの前で酷評されることだってあり得るわけです。そんなボロクソに言うワークショップも無いと思いますが仮の話として。
嫌ですか?恥ずかしいですか?変な汗が出ますよね…いや、マジで。

でもね、いい写真を撮りたいと思ったらそんなもん屁でもないと思ってください。だってこれから上手くなるんですから。何ら恥じることも恐れることもありゃしません。
くそっと思って、またたくさん撮って見てもらえばいいだけの話です。

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