写真展ご来場御礼と展示の隅とカド
6月9日から18日に新宿のphotographers’ galleryとKULA PHOTO GALLERYの2室で開催された写真展「Orchard」に多くのご来場を賜りまことにありがとうございました。
作品集をお求めいただいたり、お声掛けいただきました皆様にも改めて御礼申し上げます。
しかし、今回の展示は私にとって初めてづくし。二室同時開催にバライタ貼りっ放し、そしてロール印画紙でのプリントと作品集の作成。
過去二回の展示後は無駄に長いブログを書いていたのですが、今回は後者2つを改めて別の記事にするつもりですので、この御礼記事は展示の裏側の話をさらっと。
自分のことを自分で解説するってのも滑稽の極みですが、備忘録としてのブログでもあるので何ともご容赦を。
なお、展示のアーカイブページは近日中に公開予定です。
- 写真展アーカイブ「Orchard」のページを公開しました(2017.07.08)
展示の雑記帳と備忘録
正直今回の写真は自分にとって少しイレギュラー。撮り方も、何故撮るのかということについても前二作とはちょっと離れている。
最初の写真展「Milestones」の撮影中に派生した写真だったため、撮影を始めたのは蒼穹舎で展示した「Homeward」よりもかなり前。
どこでどんな展示にしたものかと逡巡している間に写真が溜まり過ぎてしまったことや、二室使えることから合計73枚を展示することに。
これでも先送り出来るものをごっそり外したりイロイロ手は打ったつもりなのですが…。もちろん、pgは普段壁の余白を生かした展示が多い印象なので逆を行く圧力の高い展示を…という意図も薄っすらとはありましたが。
なお、私は幾つかのテーマを並行して撮影してるが、ざっくりと展示をする順番についても決めて取り掛かっている。次回はこの写真を何処其処のギャラリーでこういう方法で云々、写真展をするにはちょっと足りないからこのテーマを集中的にかんぬん等々。
メインのカドに至るまで
初の2部屋開催ということで、展示方法は本当に考えて迷っての繰り返し。
普通に額装一段でぐるっと回すという選択が出来ない性分なものの、pgの奥の壁は斜めになっていてやや正対し辛い構造。そこをそのままメインにしてもいいのだが何か面白味に欠ける。
ならばいっそ金村修さんに倣って大全紙四段で埋めてしまおうかと計算したら、かき集めても若干写真の枚数が足りなかった(笑)。pgはWEBサイトに過去の展示風景も掲載されていることが多いので、それらは全部確認したりも。
そして、何度かギャラリーに足を運んで壁を見ながら思いついたのが右の展示方法(クリックで拡大表示)。「メインの壁」ではなく「メインのカド」方式。
元のヒントは、間をあけた額装で一段から二段・三段・カド・二段・一段という、何年か前に画像検索で見つけたmomaの展示(だったと思う)のカドの使い方。
そこからphotoshopで展示イメージを作成して行く中で、どうせなら大全紙四段行けるんじゃね?と盛られた次第。
しかし、今回改めてその画像を探すも何故か見つからない。全くもって儚いインターネッツ。
拡張するのもありだしそのまま真似するのも当然ありで、やるやらないは置いといて以下のような検索結果を時折ダラダラ眺めたりしています。
部分的にではあるが、いつか必ずと思っていた「大全紙四段」をここでやることになるとは思っていなかったのが正直なところ。
印画紙直貼りのピン
展示方法はphotographers’ gallery、KULA PHOTO GALLERY共に印画紙の直貼りでしたが、印画紙を貼るピンについては結構以前から探したり考えたりしていた。
すぐに直貼りをやる予定は無いけれど、いつか必ずやるからと思って。
そして選んだのが、右画像の無印良品「針が細い画鋲」(これが商品名)。
本体部分は最大径が6mm程度と細く、半透明で影落ちや光の乱反射も少ない優れもの。価格も12個入りで180円と懐に優しい。
展示を見た方からも好評で、ピンについての質問を何度かいただいたりもした。
他の選択肢としては、スタンダードなダルマ画鋲(押しピン)。
透明のものは意外と光の反射が気になったり中のピンの影が目に付く印象なので、白の方が良いかも知れない。最大径も10mm程度あるので、画像に被らないような印画紙の余白設定なども事前に考慮。
虫ピン(シルクピン)で留めるという方法もあり、一旦は右画像のような打ちこみ用のピンニング器まで購入して準備したのだが、深く打ち込むことが難しく壁面から数センチ飛び出しが発生する。
来場者の万が一の接触等と強度面も考えて今回はお蔵入りに。まぁ、いつか使う日もあるだろうと。
そうして決った「針が細い画鋲」だが、本当に針が細いため硬い壁だと針が曲がってしまうことがある。ピンを垂直に押し込むことに集中して、ある程度刺さったらハンマーで追い打ちするという方法で展示の設営を行った。
搬出の際には本体だけ取れてピンが残ってしまうケースも数本あったが、ペンチを用意しておけば全く問題無い範囲。画鋲自体ある程度使い捨てと割り切って使うのがいいだろう。
購入は以下無印良品ネットストアの他、無印良品実店舗でも可能。
縮むバライタ印画紙
大全紙は「針が細い画鋲」で留めて、KULAを中心としたロール印画紙は強度を考えて釘打ちに。
そして写真展開催後数日経った釘部分の拡大が右の画像(クリックで拡大表示)。
これは紙が縮んで出来た破れ。会期中暑い日はエアコンが入って乾燥し、夜間などは湿気を吸ってバライタの印画紙は少し膨らむ。
縮んだ分だけ綺麗に膨らむワケではないので、少しずつ紙が波打ったり縮みによる引き裂きの破れが出るという次第。
とは言っても、幅1mのロール印画紙の写真で5~7mmくらいの傷で、大全紙の方は探しても2~3mm程度のものが時々あった程度。なお、収縮で先の「針が細い画鋲」が外れたケースは一度も無かった。
梅雨時から夏場の展示では、気にし過ぎる必要はないが印画紙の重なりや隙間が重要な場合は少し考慮した方がいいかも知れない。
photographers’ galleryという場所
事前の打ち合わせから搬入、会期10日間フル在廊と、pgメンバーの皆様には本当にお世話になりました。
以前から天井の反射板が凄いとか、壁が綺麗(前の展示の釘穴が残ってるのを見たことが無い)とか方々で言って歩いてたギャラリーでさせていただいた今回の写真展。
お世話になったからお世辞を言う訳でなく、ホントメンバーの皆さんが場を大切にして、そこで自分たちはいい展示をするんだという想いが色んなところに見えて、正直うらやましい場所でありました。
私自身そういった印象を持っていたからこそ、かなりの緊張感を持っていい展示にできたという面はあると思います。もちろん、今のところどこのギャラリーであっても力を抜いた展示をするつもりは全くありませんが。
この企画展でもレンタルでも無い、メンバー以外の展示という初の試みが継続されるかどうか私も知る由もありませんが、またいつか展示させていただける機会があればと心から思っています。非常感謝。
展示余話(十把一絡げ
その1。今回は会場に過去二作のポートフォリオを置いたのだが、じっくり見て下さる方が多く、「Homeward」の中にご自身のHomewardを見つけられた方がお2人も。かつてか今現在か、日々見ている見ていた光景が手元にあるってのも、何とも不思議な写真の面白さだなと。
その2。海外からのお客様で日本語は全く話せない方が、展示を見て「アナタノ写真オモシロイ、オサム・カネムラさんミタイデグレート!(英語・超訳)」と仰って作品集も購入して下さった。いやはや、嬉しいです。
その3。自分で言うのもなんだけど、写真は毎日撮れないが写真のことは毎日考えている。これは金村修さんのワークショップで学んだこと。
自分の部屋でロール印画紙を焼き、現像するにはどうすればいいのかもずっと考えていたことの一つ。完璧にはちょっと遠かったけれど、絶対に次はもっと上手くやる。
その4。最後まで控室から出て行くタイミングがつかめずに会期は終わった。写真展に「こんにちは」も「ありがとうございます」も必要無いのかも知れないけれど(私も見る側なら言ってもらわなくて大丈夫という矛盾)、若干見られてる空気があったならごめんなさい。見てません。空気の波動を感じるようにしていただけds(謎
その5。写真展会期中にpgのブックショップを色々と見させていただき、北島敬三さんの「CAMP 1979」を購入。有名な写真特急便の展示会場の記録をまとめたもの。私が鼻タレガキンチョだった頃、既にこういった展示をしていた方々が最前線にいらっしゃるのだから、ワカゾーはもっともっと研鑽せねばと思う次第です。
その6。毎回、お客さんが途切れた時には自分の展示を出来るだけ見るようにしている。何が上手く行かなかったか、もっと方法があったのではないかと思いながら。そこでやるかどうかは別にして、他の展示方法なども壁を見ながら考えると非常にイメージしやすかったり。
しかし、奇しくも3回全て新宿周辺での展示となって、写真界隈という狭い中に何だか見えてしまうものもイロイロあったり無かったり。結論としては、私が信頼すべきは熱量を持って写真を見てくれる方々だという事かな。それだけ。
それは写真家・評論家・鑑賞者といった立場ではなく、今回の展示云々でもなく、もちろん私の写真を気に入ってくれる評価してくれる方にすり寄るという意味でもなく。
もちろん、最も信用すべきは自分なのだろうけど何だかねぇ…
さてさて。来年後半には次をと思うけど、またどこで展示をしたらよいものかの旅路へと。
また例によって無駄な長さとなってしまいましたが、ご来場、作品集のご購入、ご来場いただけなくてもお気に掛けて下さった方々、そしてpgメンバーの皆様へ改めて御礼申し上げる次第で…あざます!